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京都と小浜を結ぶ「鯖街道」のオアシス・熊川宿は、レトロモダンな現役の宿場町!

公開日:2024.03.01 / 更新日:2024.03.01

御食国
京都と小浜を結ぶ「鯖街道」のオアシス・熊川宿は、レトロモダンな現役の宿場町!

若狭湾に面する小浜は、古代から朝廷の食文化を支えてきた「永遠の御食国(みけつくに)」。1500年以上、小浜と京都をつないできた道は、やがて「鯖街道」と呼ばれるようになります。鯖街道を通る人々にとってオアシス的存在だった熊川宿も、昔ながらのたたずまいを生かしたまちづくりで、今も旅人を癒しています。

今回お話を伺ったのは……

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若狭町歴史文化課 永江寿夫さん(学芸員)
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若狭三方縄文博物館館長、若狭町歴史文化館館長を兼任。また地域住民とともに、若狭町のまちづくりに参画してこられました。

御食国(みけつくに)の若狭は昔からグルメの国

若狭の海の幸
「御食国(みけつくに)」は飛鳥・奈良時代から平安時代にかけ、朝廷に特産物を食材として献上していた国のこと。万葉集で詠われた言葉で、淡路国(兵庫県)と志摩国(三重県)に加えて、若狭国(福井県)が御食国と推定されています。

奈良の都・平城京付近を発掘調査したところ、それを示す木簡(もっかん;文字が書かれた木の札)がたくさん出てきたのです。若狭湾や小浜湾はリアス式海岸で、暖流と寒流も混じり合う良好な漁場環境です。若狭国は海があるため塩がとれ、お米もとれるグルメの国でした。

塩のほか、海産物はタイやカマス、ウニ、アワビ、ホヤなど、たくさんの種類を献上していました。木簡からは、魚をお鮓(すし)にしたり干したりと、保存食にして運んだこともわかります。(永江さん)

若狭から京都へ続く鯖街道~京は遠ても十八里~

若狭小浜が鯖街道の起点であることを示すレリーフ
鯖街道は福井県小浜市を起点とし、京都まで続く街道群の総称です。「京都まで遠いとはいってもせいぜい十八里(約72km)」と言い、若狭の海でとれた塩や海産物は、鯖街道を通じて朝廷に献上してきました。

やがて大衆魚としての若狭のサバが珍重され、大量のサバが京都に運ばれるように。塩を振りながら運ばれた新鮮な「若狭もの」で作った鯖寿司は、京都では祭礼に欠かせないごちそうとなりました。

また海は大陸にもつながっていますよね。鯖街道は大陸の人や文化も都へと運ぶ、交流の道でもあったのです。こうしたことから平成27年、「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国(みけつくに)若狭と鯖街道~」は、第1期の日本遺産に認定されました。

小浜と京都を結ぶ道「鯖街道」は、古くから山越えのルートが幾筋もあり、それぞれの街道や峠道には呼び名がついています。ただし山道はかなり険しく、一番平坦な若狭街道が、大量の物資を運ぶために整備され、発展していきました。(永江さん)

古民家が並ぶ「鯖街道」の宿場町・熊川宿でひと休み

鯖街道の宿場町・熊川宿
鯖街道のメインルート・若狭街道にあるのが熊川宿。全長約1.1kmの町並みは重要伝統的建造物保存地区に選定されています。大きな問屋である商家や宿など、昔ながらの宿場町の町並みが保存され、歴史的な建造物が並びます。

古民家を改修したお店で「鯖寿司」や「若狭牛」などの食事をしたり、土蔵を利用したカフェでほっこりしたり。熊川名物の「葛まんじゅう」も、ぜひ味わいたい一品です。
熊川の名物葛饅頭
「葛まんじゅうに使われている熊川の葛は、奈良の吉野葛より上質と評判で、江戸時代初めより京都のお菓子屋さんに送られていました」と、永江さん。

また文化財級の古民家をリノベーションしたレトロモダンな宿に泊まれることも、熊川宿の魅力の一つです。「八百熊川(YAO-KUMAGAWA)」では、1日4組限定の古民家のお宿を運営。スタイリッシュでありながら、どこか懐かしくホッとする空間でくつろげる宿として、注目を集めています。
街道シェアオフィス & スペース菱屋
八百熊川(YAO-KUMAGAWA)の宿泊ラウンジがあるのは、「街道シェアオフィス & スペース菱屋」。もともとは問屋を営んでいた熊川宿最大級・築140年ほどの古民家で、カフェもある複合施設として生まれ変わりました。

熊川宿を起点に山や川へ出かけ、カヤックなどの川遊びやトレイルハイクも楽しめます。アクティビティの拠点としても最高な熊川宿は、今も現役の「宿場町」なのです。
道幅が広い熊川宿

熊川宿は「 人馬継立(じんばつぎたて)」と言って、物資運搬の中継地として栄えました。馬を替えたり、荷を積み替えたり、人は宿で休んだりしました。道幅は他の宿場町と比べてかなり広く、1日1000頭の牛馬が往来したという記録があります。その牛馬に水を飲ませるための水路も不可欠のものでした。

宿場として計画的な整備がなされて、大きく発展するきっかけをつくった人物が、この地を治めていた浅野長政です。天正17年、熊川宿に対し「諸役免除」つまり税金免除のお触れを出したことで、地域が飛躍的に活性化しました。(永江さん)

道幅が広いために建物の向こうに山がよく見え、今も訪れる人の心を癒してくれます。春の新緑、夏の青空、秋の紅葉、冬の雪、どれも素晴らしい眺めですよ。
桜の季節の熊川宿

熊川宿

住所 福井県三方上中郡若狭町熊川
交通アクセス 舞鶴若狭自動車道 若狭上中ICから車で約15分
駐車場
電話番号 若狭町観光未来創造課 0770-45-9111
URL https://kumagawa-juku.com/

信長も家康も通った! 熊川宿は歴史の交差点

若狭鯖街道熊川宿資料館(宿場館)の外観
熊川宿のほぼ中央にある宿場館は、元村役場だった洋風建物。今は資料館になっています。

この辺りは古代から交通の要衝でした。航海の玄関口である若狭湾にアクセスしやすいうえ、大和(奈良県)へ至る最短路にも位置していることから、古代の若狭の王の古墳があります。中世末の戦国時代には信長や秀吉、家康、光秀もやってきています。(永江さん)

若狭鯖街道熊川宿資料館(宿場館)の内観
資料館にはこうした有名武将に関連する資料や、祇園祭の山車に掛けてあるような豪華な「見送り幕」なども展示されています。小浜からの一方通行ではなく、京都からも人や文化がここを通り、影響を及ぼしたことがわかります。

若狭鯖街道熊川宿資料館(宿場館)

住所 福井県三方上中郡若狭町熊川30-4-2
営業時間 9:00~17:00(4月~10月)
9:00~16:00(11月~3月)
休館日 毎週月曜日、年末年始
料金 大人200円、中学生以下無料
電話番号 0770-62-0330

新しい風ウェルカム! Neo熊川宿も人気

昔の町並みを保存している旧若狭街道沿いの他に、並行して走る国道303号線。ここに沿ってレトロモダンな宿や「道の駅若狭熊川宿」などがあり、熊川宿のもう一つの顔が楽しめます。

熊川は建物だけを残すのではなく、昔の外観を大切にしながらも、住民が住みよい町をめざしてまちづくりをしています。背伸びをせず特性を生かし、人の温かさやのどかさも含め、訪れる人が気に入ってくださればと思っています。(永江さん)

saba*caféの外観
道の駅の向かい側にあるSaba*Cafeは、熊川宿の新名所。もはや鯖街道の名物グルメとなった、サバサンドが味わえるお店です。バイクショップも併設されており、アクティビティの途中で立ち寄るのにも便利です。
saba*caféのサバサンド
ボリューム満点のサバサンド! 大きなサバの半身と地元でとれたみずみずしい野菜を、毎営業日の朝に焼く自家製フランスパンでサンドしています。若狭特産の柑なんば(ピリ辛の柚子みそ)を使用した特製マヨネーズソースとサバが相性抜群。テイクアウトもあって、観光客だけでなく地元の人たちにも人気です。

Saba*Cafe

住所 福井県三方上中郡若狭町熊川12−16−2
営業時間 11:00~16:00
(ラストオーダー15:30)
定休日 火曜日・水曜日
駐車場
交通アクセス 舞鶴若狭自動車道 若狭上中ICから車で約12分
URL https://saba-cafe.com/

若狭鯖街道熊川宿で文化と自然を楽しもう

京都人に愛され京都の文化を築いた「若狭もの」を運んだ鯖街道。旅してみると、若狭と京都の近さを実感し、海だけではない魅力を満喫できます。熊川宿でひと休みして、山あいののどかな空気を思いっきり味わってみませんか?
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